おむすび通信(2)

2、学校歯科衛生士の立場から

香川県の高松市立香西小学校で週に1回、歯科保健活動を行ってきました。毎週保健室に通っていると、子どもたちと井戸端会議に花が咲くこともあります。

「給食は美味しかった?学校は楽しい?何の勉強が好きかな?」とこちらが問うと、子どもたちは私に「いつもはどこで働いているの?子どもは何人いるの?虫歯を治すのは痛い?」と質問を浴びせてくる。

そして「先生は衛生士さんなのに、どうしてそんなに虫歯の治療をしているの?」と痛いところをついてくる。また、「昨日、矯正に行った」とか、「歯を頑張って治してきた」と報告に来る。時には、「縄跳びが100回できるようになったから、見に来て」とか、「来年は妹が入学してくるから、連れてきてもええかな?」と言ってくる。

このような子どもとの交流を持ちながら歯磨き指導をしていると、口腔内の状態が家庭生活に影響していることがよくわかる。特に、食生活の影響は大きい。

小学校口腔写真

5年生用のワークシート

そこで子どもたちに、食事に関するアンケートを取った。その内容は予想以上に悪かった。パンでも食べてくる方はまだ良いほうで、朝食は食べていない、ケーキと紅茶、ドーナツ、マクドナルドのセット・メニュー、プリンなど・・・はぁ~?夕食も推して知るべしだ!これでは、いくら歯磨きしても虫歯や歯肉炎は減らないし、なによりも健康にはなれない。

そこで、3年目に歯科保健活動のあり方の見直を提案したのである。

校長先生、養護教諭、保健主事、学校歯科医師、そしてPTAの方々と、どのようにこの活動を運営するかについて何度も話し合いを重ねた。

その結果、食事や生活を整えることで健康管理を身につけて欲しいと思った。すなわち、歯磨き指導と合わせて食生活を含め生活全般を考えてもらうような授業を実施することにして、1年に2度各クラスを回っていった。

子どもの話を聞いて食生活を見直して下さる家庭も増えたが、一向に良くならない家庭もあった。彼らに家庭の様子を聞くと、「夜は自分でコンビニ弁当を買って食べるんや。」と言うのは片親の核家族。お父さんが長距離トラックの運転手さんで夜帰ってこない子どもは、自分で起きて学校に来るのだと話してくれた。親の複雑な状況を子どもたちは背負っているのである。彼らにとって、頼みの綱は学校給食である。

お口の中の信号機

お口の中の信号機

そこで、子どもの健口・健康のために学校歯科医である松見先生と学校給食の完全米飯化を目指して活動を展開した。が、力の至らなさにより実現することができなかった。10年以上続けられた私自身の学校保健活動は、歯科保健に熱心だった先生方や栄養士が転勤となり、さらに校医が変わることによって終止符が打たれるに至った。

それ以来、学校給食と子どもの健康を考える会の活動も休止状態となっているのが残念ながら現状だ。

<自分なりに失敗の原因を考えてみる>

・幕内先生の講演会を定期的に開催し続けることで、給食を変えなくてはという意識が高まるが、続けることをできなかった。多忙を理由に、会の仕事が後手に回っていた。事務局に専念できるメンバーが必要であったと思う。

・身近な身内(子どもなど)が給食を食べなくなると、この問題に対する関心が薄くなるので、若い世代に対してアピールしないと、活動は失速する。

・学校給食を動かす、核となる人を巻き込むことができなかった。

・いわゆる平成の大合併で、給食がセンター方式になり米飯化へのハードルが高くなった。

つまりは、これらの活動を自分の問題だと思ってくれる人を増やすことが肝要なのだと確信している。

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