小学校6年生の歯科保健指導(平成26年用)

衛生士学校では、小学校で歯科保健指導をするためのシナリオ作りをしていますので、
紹介します。シナリオは、練習しながら修正を加え完成させていきます。

 

皆さんこんにちは。私たちは歯科衛生士になるための学校からきました。
○○です。よろしくお願いします。

皆さんは歯科衛生士という職業を知っていますか?
歯科衛生士は、歯科医院でみんなのお口の中を健康に保つために、歯の磨き方を教えたり、
フッ素の塗ったり、口の中のお掃除をします。
また、歯医者さんのアシスタントをします。

今日は、みなさんに歯ぐきの病気と健康についてお話ししたいと思います。

まず最初に、クイズを出しますね!
Q1.子供は歯ぐきの病気に、かかるでしょうか、それともかからないでしょうか?

A 、かかる  B、かからない

A 、の、かかる、だと思う人は手を挙げて下さい。  
B、の、かからないだと思う人は手を挙げて下さい。

最近の調査では、5歳~9歳の人でも
10人のうち4人が歯肉炎になっていると報告されています。

では、みなさん、この写真を見てください。

(健康な歯(A)と歯肉炎になっている歯(B)を見せる)

(A)の写真と(B)の写真、どちらの歯が健康な歯だと思いますか?

(A)の歯ぐきと(B)の歯ぐきではどこがどうちがうのでしょうか?

みなさん違いがわかりますか?少し考えてみましょう。

違いがわかった人はいますか?発表してくれる人は手を挙げてください。

(A)の健康な歯肉の色は薄いピンク色で、歯肉は三角にとがっています。

そして、歯と歯の間がしっかりと引き締まっていますね。

一方、(B)の歯の歯肉は赤みを帯びていますね。

歯と歯の間は丸みを帯びて赤く腫れています。

(B)の方は歯を磨くと出血することもあります。

実は、(B)の歯は歯肉炎という歯の病気にかかっているのです。

 

では、歯肉炎の原因はなんでしょうか?2問目のクイズをだします。

Q. どうして歯肉炎になるのでしょうか?

1. 砂糖の入った甘いものをよく食べる

2. 食べ物をよく噛んで食べない

3. 丁寧にハミガキをしない

4. 口呼吸する

当てはまると思うものに手を挙げてください。
みなさんどうですか? わかりましたか?

1、砂糖の入った甘いものをよく食べる

2、食べ物をよく噛んで食べない

3、寧にハミガキをしない

4、口呼吸する

実はすべて歯肉炎の原因になります。

1つでも当てはまるものがある人は要注意です。

では、順番に説明していきます。

まず、「砂糖の入った甘いものをよく食べる」と、どうして歯肉炎になるかについてお話します。

口に中にいるバイ菌は、砂糖を食べてネバネバした歯垢を作ります。歯垢は、虫歯の原因でしたね。

その歯垢に中に、歯肉炎の原因になるバイ菌が住み込み、歯ぐきを腫らし、歯肉炎になるのです。

次に、「食べ物をよく噛んで食べない」と、どうして歯肉炎になるかについてお話します。

食べ物をよく噛むということは非常に大切で、噛めば噛むほど唾液が分泌されます。

唾液には、歯の汚れを洗い流したり、歯ぐきの抵抗力を高めてくれます。ばい菌を殺す作用もあります。また、噛むことによって、歯ぐきの血液の流れがよくなり、マッサージ効果があります。

次は、「寧にハミガキをしない」とどうして歯肉炎になるかについてお話します。

歯を磨くとは、どういうことでしょうか?
最も重要なことは、歯についた歯垢をきれいにすることです。

歯肉炎を予防したり、治すためには、歯と歯ぐきの境目の歯垢を丁寧に磨くことが大切です。

あとで、歯垢が奇麗に磨けているかどうか、一緒に調べてみましょう。

それでは、「口呼吸する」とどうして歯肉炎になるかについてお話します。

口呼吸とは、口で息をすることです。私たちは、普通、口を閉じて鼻で息をしています。
口で息をすると、口が乾き歯に歯垢がこびりつきやすくなります。さらに、歯ぐきに唾液の作用が働かなくなり、歯肉炎にかかりやすくなります。

それでは、歯肉炎について詳しくお話ししたいと思いますが、ます、この絵を見て下さい。

みなさんもよく知っていると思いますが、ここは、歯ですね。
歯は、歯冠と呼ばれる外から見える部分と、歯肉の中に隠れている歯根部でつくられています。

歯根は、骨に埋まっており、歯根と骨の間には、歯根膜という線維でできた膜があります。
この、歯根膜は、食べ物を噛んだときの歯のクッションの役割をしており、うどんのコシなど、歯ごたえを感じる部分です。

骨を覆っているのが、ピンク色をした「歯ぐき」です。歯茎は「歯肉」ともいいます。

歯根を支えている、歯ぐき、歯根膜、骨の病気を歯周病と言います。

そして歯周病には、歯肉炎歯周炎という病気があります。

健康な歯肉が、どのようにして歯肉炎になり、歯肉炎が悪化して、歯周炎になっていくのか一緒に見て行きましょう。

健康な歯肉はギユット引き締まっており、歯と歯肉の間には、すき間がほとんどありません。

しかし、歯と歯肉の間のミゾの中に歯垢がたまると、歯垢のなかの歯周病菌が毒素を出し、歯肉が赤く腫れます。蚊に刺されて、赤くなるのとよく似ていますね。

これが歯肉炎です。

歯肉が腫れて赤くブヨブヨとした感じになったり、歯肉から血が出たりしてきます。

しかし、歯肉炎は治すことができます!

それは、ハミガキです。

歯と歯茎の境目の歯垢を、歯ブラシで落とすと1~2週間ぐらいで治ります。

歯垢がたまったままにしておくと、歯ぐきの腫れひどくなり、歯と歯肉の間のミゾ(ポケット)が深くなります。

歯周病菌は、歯周ポケットの奥に入って行き、歯を支えている骨を溶かすのです。これを歯周炎と言います。うみが出て、お口のにおいもでてきます。

悪化すると、さらに骨が溶け、歯がぐらぐらし、最後には歯が抜け落ちてしまいます。

重症な歯周炎は、全身の健康にも悪影響を与えます。歯周病菌が血液を通って体全身に回って、心臓病や糖尿病を起こすのです。

どうですか?健康な歯肉が、歯垢によって、歯肉炎になり、さらに、骨を溶かす歯周炎になるまでの流れを理解してもらえましたか?

 

では、歯周病を予防したり、治するうえで一番大事なことは何でしょうか?

そうですね、歯垢を取り除く歯磨きです。虫歯予防のためにも、歯磨きは大切です。

いまから、一緒に歯磨きについて勉強しましょう。

では、歯ブラシセットを用意してください。

歯ブラシ、コップ、タオル、洗濯バサミ、牛乳パック、赤鉛筆はありますか。

忘れた人は手を挙げて下さい。

タオルを首にかけ、後ろで洗濯ばさみで留めて、エプロンにしましょう。

 

皆さんの歯に何処に歯垢が付いているか調べるために、歯垢を赤く染めだしていきたいと思います。

お姉さんたちが、赤い液をつけた綿棒を配っていくので、もらった人は、鏡を見ながら、歯に塗って下さい。その後、一回だけうがいをし、牛乳パックの中に吐き出してください。

赤い染は、服に付くととれにくいので注意してください。

では、赤い液をつけた綿棒を配ります。うがい用の水も注いでいきますね。

歯の表だけでなく、裏にも塗って下さいね。
全部塗れた人は、一回だけうがいをしてください。

みなさんできましたか?

赤くなっているところはありましたか?
赤く染まったところが、歯垢のつきやすいところです。

どこですか?分かる人は教えて下さい。

そうですね、歯垢のつきやすいところは、
噛み合わせの溝・歯と歯の間・歯と歯肉の境目です。

では、磨き残しをゼロにするためにこれから私たちと一緒にハミガキをしていきましょう!

まずは、上の前歯の、歯と歯肉の境目を磨いていきます。

この部分は磨くのが難しく、磨き残しが多い場所です。

歯ブラシは、鉛筆を持つように持ちます。持てましたか?

鏡を見て、歯ブラシの毛先を、歯と歯肉の間にきちんと当てましょう。

歯ブラシの毛先がどこに当たっているか意識して磨いていきましょう。

当てれていますか?

大きくゴシゴシと動かして磨くと、歯肉を傷つけるので、
小刻みに歯ブラシを動かして下さい。

1本ずつ磨いていきます。10回、コチョコチョ動かして下さい。

せーの、小さく1,2,3,4,5,6,7,8,9、10

下の前歯も同じように磨いて下さい。

前歯の表はきれいになりましたか?

歯と歯の間に歯垢が残っているほとがいます。

どうしたら、磨けるかな?

そうですね、歯ブラシを縦に使って歯の1本1本に当てていきます。

毛先を上下に細かく動かして磨きましょう。

噛み合わせの面は、しっかり、このようにシャカシャカシャカと磨きます。

上の左の奥歯、上の右の奥歯、下の左の奥歯、下の右の奥歯、

それぞ10回ずつ、シャカシャカシャカと磨いて下さい。

また、一番奥の背の低い歯は、歯ブラシを斜め横から当てて、
細かく動かしながら磨きましょう。

 

みなさんできましたか?

では、鏡をみて、まだ磨けていないところを磨いてみてください。

 

わからないことがあれば近くにいるお姉さんに聞いてください。

うがいをしたいけれども水がないという人もお姉さんに言ってくださいね。

お口の中はきれいになりましたか?

歯垢がなくなったお口の中はツルツルしています。

ツルツルしていますか?

お口の中がきれいになると気持ちもすっきりしますよね。

 

歯周病を予防するには、歯を磨くだけでなく、生活習慣を見直すことも大切です。

1、栄養のバランスの取れた食事をする

2、早寝早起きをする

3、しっかり運動する

4、たばこを吸わない

どうですか?

自分に当てはまるものはありましたか?

普段から気を付けていきましょう。

 

さて、来年からみなさんは中学生になりますね。

このグラフを見てください。

実は、香川県の中学生は歯周病予備群の人が、全国平均の2倍もいます。

中学生になると、歯肉炎になる人が一気に増えるのです。
高校生になるとさらに増えています。

これは、中学生や高校生になると、歯磨きを丁寧にしなくなったり、健康的な生活をしなくなる人が増えるからだと考えられます。きっと、部活や勉強にと忙しくついつい、お口の健康のことが後回しになってしまうのでしょう。

皆さんも将来、そうならないために、健康的な生活習慣を身につけ、しっかりと歯磨きをして、予防しましょう!

ところで、毎年学校検診で歯を診てもらっていると思いますが、歯医者に行くようにと、プリントを貰った人はいませんか。なるべく、早めに行きましょう。

もし虫歯や何か異常があったときはすぐに歯医者さんに行って治療してもらうということも、自分の歯を守るためには大事なことです。

皆さんのなかで、定期的に歯医者さんに行って、お口の中の検診をしてもらっている人はいますか?手を挙げてください。

ありがとう。

定期検診では、歯科衛生士さんがお口の状態をチェックし、虫歯や歯肉炎を予防するために、自分で歯磨けないところをお掃除します。また、虫歯予防のフッ素というお薬を歯に塗ってくれます。

今日お話ししたような歯磨きの仕方や、デンタルフロスの使い方なども教えてくれます。

お年寄りで、入れ歯になっていない人の多くが、虫歯や歯周病予防のために、定期健診を受けています。

皆さんにも、定期検診に行くことをおススメします。

最後に私たちとお約束して欲しいことがあります。

1. ご飯を食べた後、寝る前はハミガキをする。

特に、歯と歯茎の境目、歯と歯の間、奥歯の溝をしっかり磨く。

2. 規則正しい生活をする。

3. 異常があれば、早めに歯医者さんに治療してもらう。定期検診に行く。

この3つです。

約束してくれますか?

いつまでも健康な、歯と歯肉を保ち、元気で過ごして下さい。

これで歯の授業を終わります。

最後までしっかり聞いて下さり、ありがとうございました。

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