歯周炎って何だ?

炎症とは、生体に対する有害な刺激に対する、生体の免疫反応によって起こる症候。

発赤・熱感・腫脹・疼痛・機能障害は、炎症の5徴候と言われる。

発赤・熱感は、血管が拡張することにより生じる血流の増加により起こる。
腫脹は、血管透過性が亢進し、血漿や白血球が血管から滲出することにより起こる。
疼痛は炎症の過程で生じる内因性発痛物質によって起こる。以上が合わさって機能障害となる。

1)歯垢を形成する細菌の代謝産物(酵素等)に、歯肉溝の組織が刺激されると感染部位には、
  感染防御機構として炎症が起こる。
 ・動脈血が増加し発赤発熱が見られる。
 ・白血球 <好中球単球マクロファージ
      好酸球リンパ球<B細胞、T細胞>」の順番> が集まってくる。

単球は、血管から出た段階でマクロファージと呼ばれる

好中球は貪食したことが刺激となって、活性酸素などの殺菌物質を産生、放出する。

第一段階、すなわ好中球(多形核白血球)マクロファージなどの食細胞が細菌を貪食する段階で細菌の増殖が抑制されれば、炎症は局所に限局し、歯肉炎の段階に留まる。

2)次の段階で、抗原提示細胞であるマクロファージは異物を貪食するだけでなく、抗原が侵入した情報をリンパ球に伝えるが、これを「抗原提示」という。
樹状細胞 (外界に触れる皮膚、鼻腔、肺、腸管に存在する) も、抗原提示細胞として機能する免疫細胞。

3)マクロファージ樹状細胞の情報により、T細胞(Tリンパ球)は異物を退治する情報を作り、その情報に基づきB細胞(Bリンパ球)は異物に対する抗体を作る。

4)また、マクロファージは、さまざまのサイトカインという炎症(情報)伝達物質を分泌する。そしてサイトカイン破骨細胞を活性化し、骨や結合組織を自己破壊し、歯周炎へと進行する。

つまり骨や結合組織を破壊する主因は、宿主自身の細胞が出すサイトカインなどの免疫反応による破壊。(敵から体全体を守っている)

5)細菌の出す内毒素スピロヘータの出す酵素にも炎症を継続し、骨を破壊する働きがある。
またスピロヘータには歯周炎を起こした歯周組織の免疫抑制を起こす。
A.aの外毒素であるロイコトキシン(白血球毒)は、免疫細胞を破壊し、
免疫反応を抑制する。
逆に、宿主が優勢となるとマクロファージは増殖因子を放出し、骨や結合組織が再生される。
骨とバイオフィルムの距離は常に2.5mmに保たれる。        
つまりプラークが侵入すれば、そこから2.5mmの深さの骨はすぐに失われる。
これは細菌から骨を遠ざけ、全身への感染を防ぐため 。

6)免疫機構で食い止められなかった細菌は、血流にのって全身に伝播し、動脈硬化や心筋梗塞など、全身の臓器へ影響を及ぼす。

7)歯周病菌の出す内毒素に反応してマクロファージが放出するサイトカインの量は  遺伝的に人により決まっていると言われている。つまり生まれつき歯周病になり易い人がいるというと。

6) 最も歯周病に関連が深いとされる3菌種は、
   プロ(ポル)フィロモナス・ジンジバーリス(P.g菌)  
   トレポネーマ・デンティコーラ( T.d菌
   タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f菌 
 「レッド・コンプレックス」と呼ばれている。これらの菌に

   アグリガティ(ゲイティ)バクター・アクチノミセテムコミタンス(A.a菌)
   プレボテラ・インターメディア(P.i菌)
   フソバクテリウム・ヌクレアタム(F.n菌)

含めて歯周病の発病に関連の深い菌種とされている。

内毒素(エンドトキシン)とは、グラム陰性菌の細胞壁成分で、菌の破壊によって遊離する。
 マクロファージを刺激し、サイトカインが産生され、破骨細胞を活性化し骨吸収を促進する。
外毒素とは、細菌が菌体外に放出する毒素の総称である。
 白血球や赤血球を破壊するものがいる。

プロ(ポル)フィロモナス・ジンジバーリスP.g菌): 偏性嫌気性のグラム陰性桿菌。
蛋白分解酵素を産生し、細菌の内毒素であるリポ多糖体(LPS)を持っている。

トレポネーマ・デンティコーラ(T.d菌)(スピロヘータ―):嫌気性のグラム陰性菌。
らせん状の形。歯肉の細胞間の隙間から組織内に入り込み、さらに血管の中に侵入する。
また、タンパク質の分解酵素と免疫抑制因子を産生する。

タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f菌):嫌気性のグラム陰性菌。紡錘状の形態。
タンパク質の分解酵素を産生するだけでなく、細胞の外膜に内毒素を持っていて、
酵素も産生する。

アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスA.a菌)《旧》アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス:通性嫌気性のグラム陰性桿菌。
「好中球」を壊す「ロイコトキシン」という外毒素を産生する。

プレボテラ・インターメディア(P.i菌)嫌気性のグラム陰性桿菌。
女性ホルモンで発育が促進されるので、思春期や妊娠したときには歯肉炎が起こりやすくなる。

フソバクテリイイウムヌクレアタム(F.n菌)嫌気性のグラム陰性桿菌。
口腔内常在菌で口臭の原因。口内炎、上気道炎、胸膜炎など起炎菌となる。

人形2

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