歯科衛生士徒然草 第五話

§第五段

—40歳以降の人、歯間に圧を加えて歯を磨かざれば、歯周炎に罹ることあり。必ず歯間清掃すべし—

歯科医院でTBIのアルバイトをしていたとき、受付の方から「あなたがアルバイトに来てから、歯ブラシの売り上げが伸びました」と言われたことがある。 結構、結構。その要因は、プロの歯科衛生士として歯ブラシの大切さをモチベートする方法を熟慮したことにあるのだ。

その1。
TBI冒頭に「歯ブラシは歯肉の状態や磨き方のクセに合わせて選択する必要があり、歯科衛生士の歯ブラシ選択が「選ぶ」ではなく「処方」なんで す」と患者さんに主張する。TBI終了後は「新しい歯ブラシを購入する際は、来院して歯肉の状態を見せてください。あなたの歯ブラシを処方しますから」と 言い添える。

その2。
TBIの患者さんでなくても、3分間で指導する労を惜しまない。

その3。
診療椅子で待ちぼうけしている患者さんに声を掛ける。「じっと待つのはもったいないから、歯磨きでもしてますか」とお勧めし、歯ブラシを買って いただく。勧める際には、補綴装着前なら「磨いておくと、きれいな補綴物ができあがりますよ」、根管治療なら「ブラッシングしておく方が治療期間は短くな りますよ」とコッソリお話するのである。
ほとなく、待合室は”内科での検温”のように、ブラッシングする患者さんが増えてきた。また、「家族の歯ブラシも買いたい」という患者さんも複数現れた。

そこでノウハウその4。
「本人を連れてきてください」と言って、すぐに売らない。これが信用アップにつながる。そうなれば、患者さんがまた次の患者さんを連れてきてくれるようになるのだ。

この経験を踏まえて、ここで提言したい。
歯科衛生士の皆様、院内にデンタルグッズの売場を持ってみては?全国の院長先生、歯科衛生士に歯ブラシ販売を任 せてみては?
TBIや商品研究、ディスプレィにも力が入り、患者さんとの信頼関係構築にもつながるだろう。ちなみに、私は友人の喫茶店に歯ブラシコーナー を設けている。得た利益は学会の会費にするもよし、親睦に使うもよし。自分を高めるために使うのであれば、先生だって賛成してくださることだろう。結果と して、医院は今まで以上に地域の方に親しまれるようになると思うのだが。