歯科衛生士徒然草 第十八話

§第十八段

春の暖かい季節になると、『公園デビュー』の格好のシーズン。初めて子どもを公園へ連れて行くお母さん方は、グループ化されている輪の中に入って上手に お付き合いできるかどうか気を揉むらしく、育児雑誌にはそんな悩みへのアドバイスが特集される。何事も初めては大変ということか。

さて、初夏から梅雨への変わり目になるとやって来るのが「むし歯予防デー」。歯科衛生士会には今年もあちこちから講演の依頼がやって来ている。昨年まで は慣れた歯科衛生士が請け負っていたが、今年は若い歯科衛生士さんにも積極的にやっていただこうという方針になった。きっと若い歯科衛生士さんは喜ぶだろ うと思っていたのだが、予想に反して返事は重い。

「やりたいけど不安。勉強したいけど、何をどうしたらよいのか見当がつかない」

というのが主な理由。なる ほど、やはり初めてのことは大変なのである。こちらも『講演デビュー』であるからして・・・・・。そこで、今回は講演デビューを少しばかりサポートしてみ たい。

その一、『まずは打ち合わせ』。依頼書をいただくのはもちろん、対象者の詳しい情報を得よう。備品の有無、水周りの様子も事前に確認したい。

その二、『原稿は相手に書いてもらう』。それをアドバイスしてあげると、双方なかなか面白い。相手は初耳情報が得られるし、こちらは世の中に転がっている信じられないような誤った歯科情報(例えば、歯石を取ってはいけない、など)をキャッチできる。

その三、『事前練習を怠るな』。発声のしかた・机の配置・ホワイトボードの使い方・場の盛り上げ方・返答ができない質問への対応などを配慮しながらやってみよう。
本番と同じ状況で予行演習を行うと、皆一様に「予想以上にうまくできなかった」と驚くのが普通。頭の中ではシミュレーションしたようには体は動かないの である。それを理解できれば、まずはO.K.。あとは練習と場数を踏むのみ。
それでも上がってしまうという方にはさらに一言。
「人はそれほどあなたの講演 を期待していない。世の中、何とかなるものよ」。